「ひと」と同じように、主人公は家族を亡くしている。
違うのは、祖父がいたこと。
朴訥で多くを語らない祖父はまさしく主人公のモデルであり、主人公自身もそれを自覚しているところがある。
そんな祖父の薦めに従い、東京に出た主人公の瞬一。
そこで多くの人に会い、その人の人生にかかわっていくことになる。
とにかく、暖かさを感じる話。
淡々としているのに、登場人物の行動と、セリフの一つ一つが結びついて人間関係を築いていくことが心地いい。
初めはよそよそしい「まち」が少しずつ自分の「まち」になっていく。
瞬一がどうなっていくかはわからないけど、明るい未来を感じさせられるラストだった。
「まち」という題名だけど根底にあるのは「ひと」だな、と当たり前なことを思った。
作者の文章のリズムにすっかりハマってしまった。
爽やかな気持ちになりたい人へ
ちょっと生活していて落ち込むことがある人へ
お勧めです。