世界情勢の変化やその煽りを受けてか、どこか心の中が不安であり、幸せであってもそれがいつか消えてしまうのではないか...
そんな背景から手に取った本。
タイトルがなんとも仏教的であり、スピリチュアルな雰囲気だが、内容は論理的であり、文献やデータ等を用いて語られているので説得力がある。
人間は生まれつきネガティブであり、ネガティブなのが当たり前であるということや、不安や不幸、苦しみは「自己」が作り出すということから本書は始まる。
苦しみや痛みそのものではなく、そこから生み出される「物語」から人は苦しむのだという。
このあたり、個人的にうなずけることばかりだった。
辛い経験をしている最中は「こんなに苦しいのは過去にこんなことがあったせいだ」とおもっていても、今が幸せなら「あのときの経験があったおかげで今が幸せなんだ」と思うのも、自己が生み出した「物語」だ。
辛いときやしんどいとき、何か別のことをしてみたり、忙しくしたりすることで辛さから免れるというのも、「自己」を忘れるからだろう。
自己を忘れれば忘れるほど、人は幸せになるし、自己にとらわれれば囚われるほど、人は不幸になる。
そして、幸せになろう、幸せでなければいけないと幸福を追求するとかえって不幸になるというのも経験上、おおいにうなずけた。
自己から抜け出す技法や精神修養を実際に行うかは別にしても、私たちの行動を縛る「悪法」は読んでおいて損はない。
誰しも当てはまる悪法があるはずなのだから。
この本をお勧めするのは、「はじめに」でも語られているように、未来に明るい展望を感じられない、すべてから逃げたい人や、他人の何気ない発言に傷ついてしまう人、生きる意味を感じられない人におすすめの内容である。